2009-02-10

李白 漢詩

送友人(ゆうじんをおくる)

青山横北郭(せいざん ほっかくによこたわり)
白水遶東城(はくすい とうじょうをめぐる)
此地一為別(このち ひとたびわかれをなし)
孤蓬萬里征(こほう ばんりにゆく)
浮雲遊子意(ふうん ゆうしのい)
落日故人情(らくじつ こじんのじょう)
揮手自茲去(てをふるって ここよりされば)
蕭蕭班馬鳴(しょうしょうとして はんばなく)

☆班馬-別れ行く馬。「班」は別れる。
緑の山並みが町の北に連なり、清らかな川が町の東をめぐり流れている。今、(君は)この地に別れを告げ、風に舞い飛ぶよもぎのように万里のかなたへ行く。浮かんでいる雲は旅人の心を、赤い夕日は私の情をあらわしているようだ。互いに手を振ってここから去ろうとすると、別れて行く馬も悲しげに鳴く。

静夜思(せいやし)

牀前看月光(しょうぜん げっこうをみる)
疑是地上霜(うたごうらくは これちじょうのしもかと)
挙頭望山月(こうべをあげて さんげつをのぞみ)
低頭思故郷(こうべをたれて こきょうをおもう)
寝台の前、月光を見る。まるでそれは地上におりた霜かと思われた。頭をあげて遠くの山にかかる月をみていると、自然に故郷のことが思い出され頭をうなだれるのだった。

独坐敬亭山(ひとりけいていざんにざす)

衆鳥高飛尽(しゅうちょう たかくとびてつき)
孤雲独去閑(こうん ひとりさって かんなり)
相看両不厭(あいみて ふたつながら いとわざるは)
只有敬亭山(ただ けいていざんあるのみ)

多くの鳥が空高く飛び去り、ひとひらの雲もどこかへ去ってあたりは静かである。お互いに見つめあってあきることがないのは、敬亭山だけである。

江上吟(こうじょうのぎん)

木蘭之枻沙棠舟(もくらんのかい さとうのふね)(もくらんのかじ・・)
玉簫金管坐両頭(ぎょくしょう きんかん りょうとうにざす)
美酒樽中置千斛(びしゅ そんちゅう せんこくをおき)
載妓随波任去留(ぎをのせ なみにしたがい きょりゅうにまかす)
仙人有待乗黄鶴(せんにん まつ あって こうかくにのり)
海客無心随白鴎(かいかく むしんにして はくおうにしたがう)
屈平詩賦懸日月(くっぺいのしふは じつげつをかけ)
楚王台榭空山丘(そおうの だいしゃは むなしく さんきゅう)
興酣落筆揺五岳(きょう たけなわにして ふでをおとせば ごがくをゆるがし)
詩成笑傲凌滄州(し なって しょうごう そうしゅうをしのぐ)
功名富貴若長在(こうみょう ふうき もし とこしえにあらば)
漢水亦応西北流(かんすいもまた まさに せいほくに ながるべし)
☆木蘭-木の名。沙棠-木の名で、この木で船を作ると沈まないといわれる。玉簫-玉で飾られた縦笛を十数本並べた楽器。屈平-屈原のことで、「楚辞」を集大成した。台榭-見晴らし用の建築物。
木蘭のかいに沙棠の船、玉の簫と金の笛が船の前後で奏される。美酒も樽に千石用意され、歌姫を載せて、進むもとどまるも波にまかせている。
仙人は黄鶴を待って空に昇っていき、海辺の男は無心に白鴎にしたがい遊ぶ。屈原の詩賦は日や月のように輝いているが、楚王の築いた建物は、むなしく山丘を残すだけになってしまった。
船遊びもたけなわとなり、筆をとれば、筆勢は五岳を揺るがすほどであり、詩ができあがり、高々と笑えば、仙人の島をも凌ぐほどである。功名や富貴が永遠に存在するならば、東南に流れている漢水も西北へ逆流するであろう。

早発白帝城(つとにはくていじょうをはっす)

朝辞白帝彩雲間(あしたにじす はくていさいうんのかん)
千里江陵一日還(せんりのこうりょう いちじつにしてかえる)(・いちにち・)
両岸猿声啼不住(りょうがんのえんせい ないてとどまらざるに)(・やまざるに)
軽舟已過萬重山(けいしゅうすでにすぐ ばんちょうのやま)

朝早く色美しい雲の中にそびえる白帝城に別れを告げた。千里のかなた江陵へは一日で帰る。両岸の猿の鳴き声はやまない。私の軽い舟は、折り重なる山々を早くも通り過ぎていく。

 

望廬山瀑布(ろざんのばくふをのぞむ)

日照香炉生紫煙(ひはこうろをてらして しえんをしょうず)
遥看瀑布挂長川(はるかにみる ばくふのちょうせんをかくるを)
飛流直下三千尺(ひりゅうちょっか さんぜんじゃく)
疑是銀河落九天(うたごうらくは これぎんがの きゅうてんよりおつるかと)
太陽は香炉峰を照らして紫色の霞がたなびき、はるか向こうの川に滝がひとすじかかっているのが見える。滝の流れは直下すること三千尺。天の川が空の一番高い所から落ちてきたのかと疑ったほどだ。

 

望廬山五老峰(ろざんの 五ろうほうをのぞむ)

廬山東南五老峰(ろざん とうなんの 五ろうほう)
青天削出金芙蓉(せいてん けずりだす きんふよう)
九江秀色可攬結(きゅうこうの しゅうしょく らんけつすべし)
吾将此地巣雲松(われまさに このちにて うんしょうに すくわんとす)
☆五老峰-廬山の中でも最もけわしい峰といわれる。五人の老人が肩をならべた形をしている。金芙蓉-山の形がはすの花に似ていて、金色にかがやいている。雲松-雲のかかっている松。
廬山の東南の五老峰は、青空の中から金色のはすの花を削りだしたようだ。長江の九つの支流の美しい景色のすべてが、手にとるように見えるので、私はこの地において雲のたなびく松の下にねぐらをつくりたいと思う。

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